ICー705雑感
さて、今回ハムフェアで最も注目されたアイコムIC-705の個人的感想等。
配布されたパンフレット(アイコム公式サイトからPDFがダウンロード出来る)に記された主な仕様は以下の通り。

●大きさ
幅20cm×高さ8cm×奥行き8.5cm
重さ電池込みで約1Kg
●HFから50、144,430MHzオールモードカバー
D-STARのDVモードも可能
30KHzから144MHzまで連続受信カバー
●リアルタイムスペクトラムスコープ&ウオーターフォール表示
●タッチ操作対応大型カラーディスプレイ搭載
●リチウムイオン充電池(BP-272)、外部電源(13.8V)の使用が可能
●送信最大出カ10W(外部電源13.8V時)/5W(付属充電池使用時)でQRP、QRPpでの運用にも対応
●Bluetooth/無線LAN接続に対応
●GPSアンテナ、GPS口ガーを搭載
●microSDカードスロットを装備
●V/UHFに対応したホイップアンテナとスピーカーマイクが付属
●移動、フィールド運用に最適なマルチバッグ「LC-192」を用意
とのこと。
久々のフィールド運用メインのHF~430MHzオールモードポータブル機新製品。
徒歩QRP移動運用ユーザーにとって2000年発売のヤエスFTー817とその後継機818ND以外にほぼ選択肢がなかったオールモードポータブル機。
この約20年の間、他社にFT-817の対抗機がなかったその理由は解らない。
もっともまったく存在しなかった訳でもなく、2003年に発売されたIC-703も移動運用機として位置付けられたとも言われる。
2007年のアイコムカタログより↓
だがその割には短命で、今はもう生産中止。
2004年にFT-817を購入した際、IC-703は検討の対象にならなかった。というより知らなかった。
また、2011年頃に発売されたエレクラフト製のKX-3という無線機もQRP移動運用に特化されたリグだが、海外製ということで価格も17万円前後(本体完成品輸入代行価格サポート代含む。オプション含めれば20万円近く)らしく、なかなか手が出せない。
他は固定用に重心を置いて外部電源オンリー、車載すれば移動運用も出来なくもないという機種ばかり。
つまり、移動運用イコールモービル前提という時期がずっと続いていた。
結局、徒歩オンリーユーザーに限ってはFT-817シリーズの独断場が延々と続く結果に。
だがSOTAやフリーライセンス無線人気が上昇する中、この期に及んでやっと他の国内主力メーカーも徒歩フィールド運用をメインとしたアマ無線機需要に気がつき始めたのだろうか?
さて、このIC-705.
それぞれの観点からFT817系と比較してみようと思う。
●躯体、大きさ、重さ
初めて観る印象としては、「レンガの塊」。
重さは約1Kg.FT-817の電池装着時と大きな差はない。
ポータブル機のイメージとしては、やはりショルダーベルトを肩や首に引っ掛けて運用する古典的スタイルが目に浮かぶ。
FT690MKⅡのような「青春ポータブル」イメージ。
しかし、このIC-705はあくまで横置き。
どうしても車載用という印象が拭えない。
これを縦にして、昔のCB機やピコシリーズのようなフラットな立方体にし、メインダイヤルをトップに置き、ストラップを標準装備にすればポータブル機としてしっくりいくのだが、このままだとどう持ち歩けばよいのか迷う。
なので、勝手にカスタマイズした妄想イラストを描いてみる。
一応IC-705の背面にはベルトも通せるスリットがあるので肩掛けも不可能ではない。
もっとも、移動運用時に肩掛けのまま運用することは稀で、レジャーシートなり東屋の机の上なりに設置する訳で、実際使ってみないと何とも言えず。
いずれにしろ、もう少し形状的にスッキリさせて、スタンドも付けるとかすれば、よりベターとなる。
FT-817も横置きした場合、スタンドがないのでディスプレイが見難く難儀している。この部分だけでも使い勝手は飛躍的に向上する。
IC-705には移動、フィールド運用に最適なマルチバッグ「LC-192」が用意されている。

カタログにも写真が載っていて徒歩移動運用をかなり考慮したオプション。
しかし、IC-703時代にも似たようなコンセプトで「LC-156」というマルチバックが用意されていたが、あまり普及した話は聞かない。
IC-703のカタログより↓
徒歩移動運用の場合、無線機、アンテナ以外にもハイク用の備品をリュックに詰め込むので、どうしてもマルチバックの容量には収まらない。
このオプションマルチバックのみで移動運用が快適に過ごせるかどうかは何ともいえず・・。
ただ、IC-705はIC-703よりかなりコンパクトなので、単純な比較は出来ないだろう。
●操作系、ディスプレイ
最新の固定機に標準装備されたタッチ操作対応大型カラーディスプレイをポータブル機に導入した点はFT-817を大きく凌駕する。
20年近く前に設計されたFTー817系は、ディスプレイも最小限。同じボタンでいくつもの操作を兼用するので、未だに迷うことがある。少なくともIC-705のほうが操作しやすいのは明らか。
実際、移動運用でタッチ操作対応大型カラーディスプレイが必要かどうかは解らないが、最新の固定機を持っていない者からすると、非常に新鮮で面白そうだ。
問題は消費電力。このディスプレイ使用であっという間に電力が無くなったら本末転倒。
あと、移動運用は物理的に衝撃が加わる事も多々あり、これだけディスプレイが大きいと破損する可能性も大。
ディスプレイ保護のカバーも必須と思われる。
●電源
電源はリチウムイオン充電池(BP-272)、外部電源(13.8V)の使用が可能。
屋外だとこの専用充電池が切れたら、嵩張る外部電源が別途必要。
予備の専用充電池は必須。
単3アルカリ電池やエネループが使えるFT-817系のほうが汎用性は高い。
●その他の機能
最新リグであるIC-705はBluetooth/無線LAN接続に対応し、GPSアンテナ、GPS口ガーを搭載、microSDカードスロットを装備している。
当然ながら2000年設計のFT817系には入っていないので比較に意味はない。
またIC-705にはオートアンテナチューナーが搭載されていない点が残念という声も聞く。
移動時にアンテナのマッチングが面倒になるので、あるに越したことはないのだろう。自分はオートアンテナチューナーを使ったことがないが、アンテナカップラーでHF帯のアンテナ調整は確かに面倒だった。
今はGAWANTで簡単に調整できるのでQRPPであれば、オートアンテナチューナーがないFT-817でも問題なし。この点はIC-705でも同様だろう。
●価格
IC-705の実売価格予想は10万円前後になるとネットでは噂されている。
FTー818NDの実売価格は8万円弱前後。
機能差を考えるとIC-705が高すぎる感じはしない。
●個人的感想としてIC-705導入の可否
1987年に開局し、FT690MKⅡで17年間。
2004年にFT817を導入し、15年間。
どちらも移動運用、固定機として兼用してきた。
他はミズホP-7DX(7MHzCWQRPP機)とスタンダードVX-3(144、430FMハンディー)だけ。
現在FT817は所々ガタがきて、八重洲のサービスへ修理に出している。
FT-690MKⅡはここ10年以上使用しておらず。
10Wリニアで電源は入るが電池ボックスが液漏れで破損。移動運用には使えそうにない。
FT690MKⅡからFT-817に乗り換えたときは、690MK-Ⅱの受信機能等に劣化が見られ、アフターサービスも終了している上に50MHzオンリーの移動運用はややマンネリ化していたという状況もあり、新機種導入は時間の問題でもあった。
だが今のFT-817は基本的に過不足もなく、自分の無線スタイルとしてはまだまだ使っていけそう。
これまで殆どQRVしていなかった18~28MHz帯もGAWANTアンテナを使えばこのFT-817で十分QRP交信が楽しめる。
しかし、最近のFT8やD-STAR等のデジタルモードは対応が難しい。
無理してデジタルモード交信しなくともよいのだが、GPSで経路を記録したり、最新のディスプレイで操作してみる楽しみも捨て難い。
この辺りで、IC-705を導入してもタイミング的には悪くはないとは思う。
まあ臨機応変にFTー817と併用してもよい訳だから、メインリグ更新として視野に入れておきたい。
●ハムフェアーでのプレゼンテーション
今回のハムフェアではIC-705のプレゼンテーションとフォトセッションが何回か組まれていた。
初日は相当混雑していたようだ。
宣伝の仕方も巧い。ハムフェアー前に一部輪郭部分だけを公表し、興味を掻き立てる。
アイコムブースのIC-705コーナーはアウトドア風のディスプレイで「待望のオールモードポータブル機」であることを演出する。
それが功を奏してか、常に人垣である。
プレゼンテーションとフォトセッションは写真撮影もプログ掲載もOKということで、空いた9月1日の13時30分台に開かれた時間帯に見学する。
カタログにも掲載されたマルチバックを背負ったモデルMasacoさん(局免持ち、JARL広報大使でもある)が登場し、ポーズをとる。





体の小さい女性と比べても確かにコンパクトだ。
もし、このIC-705が大ヒットしたら、新たなる移動運用ブームが来るかもしれない。
アニメ『ヤマノススメ』や『ゆるキャン』などでソロキャンパーは増えたらしいので、メーカーやJARLがアウトドア界隈とタイアップキャンペーンを展開し、萌えキャラクターで移動運用アニメを地上波や動画サイトで放映配信すれば、まったくありえない話でもない。
他のメーカーも呼応して次々に同様なポータブル機を発売。パナソニックも半世紀ぶりに新RJXシリーズを復活なんて時代が来るかも。
あるいは逆にIC-703と同様に煮え潰れ、結局2020年以降もFT-818が唯一HF~430MHzオールモードポータブル機として細々と生き長らえる運命なのかもしれない。
いずれにせよ、このIC-705が新世代ポータブル機の新たな波を呼び込んだことだけは間違いない。
最後に主な現有のHF~50MHz/144/430オールモードのポータブル機とIC-705のスペック比較表を作ってみた。
| YAESU FT-818ND | KX-3 | ||
|---|---|---|---|
| 送信周波数範囲 | 1.9MHz帯 ~ 50MHz帯 144MHz 帯、430MHz 帯のアマチュアバンド 4630kHz( 非常連絡設定周波数) |
1.8MHzから50MHzまでのアマチュアバンド | HFから50/144/430MHz |
| 受信周波数範囲 | 100kHz ~ 30MHz 50MHz ~ 54MHz 76MHz ~ 108MHz(WFM のみ) 108MHz ~ 154MHz 420MHz ~ 470MHz |
(代理店サイトには記載なし) | 30kHzから144MHz帯まで連続カバー |
| モード | A1A(CW)、A3E(AM)、J3E(LSB/USB)、F3E(FM)、 F1D(9600 bps packet)、F2D(1200 bps packet) |
SSB,CW,データモード(4種),AM,FM | SSB/CW/RTTY/AM/FMに加えD-STARのDVモード |
| 定格送信出力 (アマチュアバンド内) |
6W(SSB/CW/FM)、2W(AM) 6W/5W2.5W/1Wの4段階の設定 |
出力可変範囲0.1~10W(高効率10W/5Wの2台のパワーアンプ内蔵) KXPA100 オプションにより 100W |
最大出カ10W(外部電源13.8V時)。付属のリチウムイオンバッテリーBP-272(7.4V 2000mAh)装着時は、最大出カ5Wでの運用が可能。QRP(5W)QRPp(0.5W)にも対応 |
| 電源電圧 | 外部電源:定格 DC13.8V ± 15%(マイナス接地) (使用可能電圧:DC8.0V ~ 16.0V) 内部電池:単三乾電池 DC12.0V SBR-32MH DC9.6V |
13.8V 単3型ニッケル水素電池 8本 内蔵可能 |
外部電源13.8V 付属リチウムイオンバッテリーBP-272(7.4V 2000mAh) |
| 外形寸法 (W x H x D) | 135 mm x 38 x 165mm (突起物含まず) | 188x86x43mm(オプション無し) | |
| 質量 | 約900g:本体のみ(乾電池、充電池、アンテナ、マイクは含まず) | 680g(オプションを含まず) | 約1kg(充電池BP-272含む、アンテナ除く) |
| 実売価格(19年9月現在) | 8万円弱前後 |
169,248円(本体完成品輸入代行価格サポート代含む)価格表参照 |
10万円前後を予定 |
| 発売日 | 2018年3月(原型のFT-817は2000年) | 2011年 | 2020年3月発売開始を目指す |
| その他 | 充電式のニッケル水素電池(1900mAh)を標準付属している他、単3形乾電池運用、外部電源による運用など多彩な電源供給に対応し快適なポータブル運用が可能。 ・充電式電池運用:ニッケル水素電池パック(9.6V 1900mAh)標準付属 ・乾電池運用:単3形アルカリ乾電池8本による運用(乾電池ケースは標準付属) ・外部DC電源運用:外部電源ケーブル(E-DC-6) 標準付属 |
小さなサイズに関わらず1.9~50MHzの全てのアマチュアバンドをオールモードでカバー、大型固定機に 迫るDSP機能をフル活用可能。(詳細は公式代理店サイト参照) |
●RFダイレクト・サンプリング方式を採用 ●リアルタイムスペクトラムスコープ&ウオーターフォール表示 ●タッチ操作対応大型カラーディスプレイ搭載 ●リチウムイオン充電池(BP-272)、外部電源(13.8V)の使用が可能 ●送信最大出カ10W(外部電源13.8V時)/5W(付属充電池使用時)でQRP、QRPpでの運用にも対応 ●Bluetooth/無線LAN接続に対応 ●GPSアンテナ、GPS口ガーを搭載 ●microSDカードスロットを装備 ●V/UHFに対応したホイップアンテナとスピーカーマイクが付属 ●移動、フィールド運用に最適なマルチバッグ「LC-192」を用意 |
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