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東京スカイツリー展望台からの移動運用を考察する

さて、5月22日に開業予定の東京スカイツリー
3月22日からは個人向けチケット予約受付も始まった。
今更説明するまでもないが、高さ634mという自立鉄塔としては世界一の高さを誇る電波塔だ。
展望台も350mと450mに設置してあり、日本では未知の高さからの眺望が期待できる。
当然、アマチュア無線や特定小電力無線の移動運用候補地としても興味深い。
自分はこのような象徴的な高層建築物が完成する度にQRP移動運用にチャレンジしてきた。
その時の経験も踏まえ、東京スカイツリー展望台からの移動運用の実践の是非を解り得る範囲で考察してみようと思う。
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イベント施設としての移動運用環境
世間も注目する東京スカイツリー開業直後の展望台見学は、一種の大規模イベントでもある。
だから開業から7月10日までは入場チケットが完全予約制になった。
こうなると、オープンから暫くは飛行場や各種イベント会場と同じく、高いレベルのセキュリティーが求められ、手荷物検査や様々な物品持込禁止が実施される可能性もある。
1日の発行チケット数は個人が8000枚。+団体、ツアー客を含めれば1万数千人のオーダーだ。
入場に支障を来たす手荷物検査は現実的ではないが、果たしてどうなるか。

このような大規模イベント施設では様々な物品持ち込み禁止の場所も少なくない。
東京ディズニーリゾートの公式サイトにはペット、お弁当、アルコール、三脚などが持ち込み禁止と明記してある。
愛知万博ではお弁当やペットボトルに加え、無線機持ち込みが制限された。
恐らく様々な機器に影響を与えかねないという理由なのだろう(なぜか携帯電話だけはスルー。これに関しては後述する)。
他、野球、サッカー等のスポーツイベント、基地解放日等では必ず手荷物検査が実施される。
2011年の航空自衛隊入間基地祭や在日米軍横田基地祭でも実施された。
但し、これらのイベントでは無線機の持込は特に規制対象にはなっていない。
自分もハンディー機を持参したが特に何も言われず、基地内での交信等も問題なかった。
以前から特定小電力無線で連絡を取り合う光景は普通に見られたため、無線機使用はフリーというスタンスなのだろう。
果たして東京スカイツリー展望台の場合はどうなるのか?
特に電波塔という性格上、アマ無線機持ち込みに対してナーバスになる可能性は否定できない。

東京スカイツリー展望台移動運用の可能性
2012年3月末現在、東京スカイツリー展望台への持ち込み制限はアナウンスされていないようだが、開業近くになれば何らかの発表があるかもしれない。
まず、結論から言ってしまえば、管理者たる東京スカイツリーが展望台への持ち込み禁止項目の中にアマチュア無線機等が含まれてしまえば、事実上、移動運用は不可能となる。

一方、無線機持ち込みが規制されないと仮定した場合、従来の高層建築物に設置された有料、無料の展望台や展望ロビーにおける移動運用状況と比較し、どのように対処すべきか、自らの経験もふくめて考察してみた。

1.電波塔の場合
まず、スカイツリーと条件が似ている東京タワーを例にしてみる。
東京タワーの公式ホームページには、特に規制条件や手荷物検査などの項目はない。
今のところ、展望台でのアマチュア無線等を禁止する明確な制限明示はないと思われる。
ただ、現実問題として放送波送信を主に扱っている電波塔内で個人のアマチュアが任意に電波を出す事は歓迎されないだろうし、たとえ禁止になっていなくとも派手に無線機を扱うのは憚れる行為と思われる。
電波塔そのものではないが以前、お台場フジテレビの球形展望台で特定小電力トランシーバーを使用した際、係員に注意された経験があった。

もっとも、無線許可されているか否かに拘わらず、直上から強力な放送波が出ている電波塔での移動運用は条件が悪すぎる。
東京タワー直近の六本木ヒルズ屋上で移動運用にチャレンジしたことがあるがVHF,UHFの無線機は抑圧されて著しく送受信に苦労した経験があった。
また、同じく直近の浜松町貿易センタービル展望ロビーで特定小電力無線交信した際も、送受信が正常に行なわれなかったケースがあった。
そんな悪条件を裏付けるように、これまで東京タワーからの移動運用局と交信した記憶がないし、自分も東京タワーを移動運用地の候補として考えた事はなかった。
これがそのまま東京スカイツリーに当てはまるとは思わないが、憂慮される条件のひとつだ。

そこで5月末の時点でスカイツリーからの放送波送信はどうなっているか調べてみた。
スケジュールによると

東京スカイツリーから本放送予定の放送事業者
○FM放送
NHK東京FMとJ-WAVE→2012年4月下旬本放送開始予定

○携帯端末向けマルチメディア放送(VHF-HIGH帯)

「NOTTV」→2012年4月1日より本放送開始予定
○タクシー業務無線→2012年3月より運用を順次開始し5月からの本運用開始予定

○在京テレビ局→2013年1月本放送開始予定

つまり、展望台開業時にはすでにFM放送波とモバキャス、タクシー無線波は常時出ている状況だが、テレビは電波をだしていないと。
少なくともスカイツリーからの移動運用が可能ならばテレビ本放送が始まる前に実施したほうが有利かもしれない。

2.一般の高層ビル施設の場合
電波送信施設以外の高層建築展望ロビーでの移動運用環境を考えてみる。
著明な首都圏展望ロビーとして

新宿区都庁舎(高さ243m、第一本庁舎45階南北に展望ロビー、料金無料)
サンシャイン60(高さ251m60階に展望ロビー、256mにスカイデッキ、料金620円)
六本木ヒルズ(高さ238m、52階に展望室、屋上にスカイデッキ、料金1500円)
横浜ランドマークタワー(高さ273m、69階にスカイガーデン、料金1000円)


等が上げられる。
それぞれの公式サイトを観る限りにおいてはアマチュア無線移動運用自体に絞って禁止を掲げるような記載は存在しない。
但し、実際に移動運用を行なった際の経験として、新宿都庁舎の展望フロアでは長時間の無線は遠慮してほしい旨の注意書きは存在するし、実際に係員から注意された経験もある。更に2012年現在は手荷物検査も実施しているという。
一方、サンシャイン60、六本木ヒルズ、横浜ランドマークタワーにおいて移動運用を行なった経験では特に問題は発生しなかった。
詳細はサンシャイン60移動運用記(2008年)六本木ヒルズ移動運用記(2008年)を参照のこと。
基本的に危険物持込や場所を占有したり他の人への迷惑行為に抵触しない限り、展望ロビーでの移動運用は可能と考えてよいだろう。
特にフリーエリアのある無料展望ロビーは立ち入り自由なので、建物の入場に制限がない限り、問題はない。
恵比寿ガーデンプレイス移動運用記(2012年)参照。
但し、特に明記されていなくとも警備の人から「無線はNG」と注意されることも少なくない。
特に2001年のニューヨーク国際貿易センタービルテロ事件直後はどの展望ロビーも気軽に無線運用が出来る雰囲気ではなかった。
ただ近年は注意されるケースはかなり減ったのも事実。
新宿NSビルや新宿野村ビル等の西新宿各無料展望フロアは2005年頃(移動運用記参照)は警備員に注意されたが、現在はまったく問題なく移動運用出来る。
詳細は新宿住友ビル移動運用記(2008年) 、新宿センタービル移動運用記(2009年) 、 新宿野村ビル移動運用記(2011年)参照のこと。
但し、スタンスは、時勢や管理担当者によって常に変化するので直近の情報収集が不可欠だ。
2006年頃、埼玉県大宮のソニックシティービルの展望ロビーに移動運用した時は、無線のみならずアベック同士のお喋りにまで規制をかけていたガードマンがいた。
これは極端な例だが、その日の担当者や状況によって対応がまったく異なる場合もあるから、タイミングが左右する事も想定しておこう。
展望台で規制されている物品として典型的なのは、カメラの三脚やペットであろう。
メジャーな展望ロビーでは必ず明記されていた。
かつて六本木ヒルズではエレベーターに乗る前に三脚はロッカーに保管を指示されていた。
しかし、2012年現在は屋上以外では使用可能になったようだし、サンシャイン60やランドマークタワーの展望ロビーでの三脚使用もOKらしい。
東京スカイツリーオープンを控え、展望台集客の競争が激しくなり、各ビルも規制緩和の方向に流れているようだ。
とはいえ他の客の眺望を妨げる占有にあたるケースに抵触する事に変わりはない。
当然、大きな無線アンテナも占有にあたるので気をつけるべきだ。

携帯電話は規制されない?
ところで、同じ電波を発する携帯電話の制限を設けている展望施設は殆どない。
展望台に入る前に手荷物検査で携帯電話を取り上げたり、電源を切らせるケースは稀有だ。
六本木ヒルズの屋上解放も携帯だけは持ち込み可能になっている。
携帯電話とQRP無線機との出力の差を比較してみよう。

無線機と携帯電話の送信出力の比較
特定小電力トランシーバー             10mW
QRPアマ無線ハンディー機     概ね100mW~1W
351MHz帯デジタル簡易無線      概ね1W~5W
携帯電話                概ね250mW~1W
PHS                   10mW~100mW

これを見ても解るように実際、特定小電力無線の出力は携帯電話の出力より弱い訳で、携帯を許可する一方で無線機だけをすべて規制対象にするのは管理者の無知が問われる事例である。
東京スカイツリーでも、おそらく携帯持ち込みは規制されることはないだろう。
もし、携帯電話型のQRPアマチュア無線機が存在すればどうなるのか興味深いところだ。
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常識的なマナーを守る
結論として無線禁止が明確に意思表示されていなければ、東京スカイツリー展望台での移動運用は可能と考えてよかろう。
注意すべきは常識的なマナーであって、これはもう無線云々以前の問題。
「その他の迷惑行為」に入る範疇のことはしてはならない。
スペースを占有するアンテナを設置したり、大声で交信したり、他者に不快な印象を与える言動や行動をすれば、自ずと移動運用に対する世間の目はネガティブになってしまう。
その結果、無線が禁止になってしまう事例も少なくない。
基本的に高層ビル等の展望ロビーでの移動運用は極力目立たず、1w程度のQRPハンディーかポータブル機を鞄の中に潜ませ、隅っこのほうでイアフォーンを使用し、大人しく運用するのが最低限の嗜みであろう。
また誰かに話し掛けられたら愛想良く対応し、警備員から注意を受ければ素直に従うのがベターな行動だ。

東京スカイツリー開業まであと2ヶ月。
無線の移動運用が可能である事を祈りたい。

追記
2015年11月現在、展望台への無線機持込は禁止が明記されているようである。

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